銀(Ag)

化学物質

最近金の価格が高騰しているというニュースをよく耳にしますが、銀ってどうなの?と思い調べてみました。2025年9月1日の国内公表価格(小売価格)は、1グラムあたり206円でした。

びっくりじゃないですか?一昔前(2000年~2010年頃)は、1グラムあたり70円程度だったんですよね。ということで、銀について気になったので、記事にしてみることにしました。まずは、基本情報から。科学的に銀の基本情報です。

1. 基本情報

  • 元素記号:Ag
  • 原子番号:47
  • 元素分類:遷移金属(第11族、銅・金と同じ族)
  • 名称の由来:ラテン語の argentum(輝くもの)

物理的性質

  • 色と光沢白色の金属光沢をもち、反射率が非常に高い(金属中で最高クラス)。鏡や装飾品に利用される。
  • 延性・展性:非常に柔らかく、薄く延ばしたり細く伸ばしたりできる(金・銅と同様)。
  • 導電性・熱伝導性:すべての金属の中で最も高い。電気配線や高性能接点に利用される。
  • 密度:約 10.5 g/cm³
  • 融点:961.8 ℃
  • 沸点:2162 ℃

化学的性質

  • 安定性:金や白金ほどではないが比較的安定。空気中では酸化皮膜を作りにくい。
  • 変色:硫黄を含む成分(大気中の硫化水素など)と反応し、黒色の硫化銀 (Ag₂S) を形成する。
  • 酸との反応
    • 希硫酸や希塩酸にはほとんど溶けない。
    • 硝酸や濃硫酸とは反応して溶ける。
  • 化合物:塩化銀 (AgCl)、硝酸銀 (AgNO₃)、酸化銀 (Ag₂O) など。特に硝酸銀は医療や化学試薬で広く使われる。

銀の利用

  • 装飾品・貨幣:古代から宝飾や通貨に利用。
  • 電子材料:導電性の高さを活かし、半導体・接点・はんだなどに使用。
  • 鏡や光学材料:反射率の高さを利用。
  • 写真:かつてはハロゲン化銀(AgCl, AgBr)が感光材料として写真フィルムに使われた。
  • 医療:銀イオンには強い抗菌作用があり、創傷処置や殺菌剤に応用。

銀の特筆すべき特徴を3つ挙げるとすれば、以下のような点があります。

2.銀の特筆すべき特徴

1. 優れた熱伝導性と電気伝導性

銀は、すべての金属の中で最も熱と電気を通しやすいという特性を持っています。このため、電子機器や太陽光発電パネルなどのハイテク産業に不可欠な素材となっています。特に、電気自動車やスマートフォンの需要が増加するにつれて、この電気伝導性の高さが改めて注目されています。

2. 抗菌・殺菌作用

銀には、高い抗菌・殺菌作用があります。古くから医療器具や食器などに使われてきた歴史があり、現代でも浄水フィルターや衣料品、医療用素材などに幅広く応用されています。この作用は、ごく微量の銀イオンが細菌の活動を抑制することから生まれます。

3. 美しい光沢と加工性の高さ

銀は、美しい白色の光沢を持ち、展性や延性に優れていて、非常に加工しやすい金属です。この性質から、古くから宝飾品や工芸品、食器などの素材として重宝されてきました。磨くことで美しい輝きを放ち、様々な形に加工できるため、アートやデザインの分野でも重要な役割を果たしています。

3.銀の産出国

銀は自然界に「銀鉱」として単体で産出することは稀で、多くは鉛・亜鉛・銅・金の副産物として採掘されます。

主な産出国(世界)

(2020年代のデータを基準にした概況)

  • メキシコ:世界最大の産出国。大規模な鉛・亜鉛鉱山の副産物として多量の銀を生産。
  • 中国:鉛・亜鉛鉱山や銅鉱山からの副産物として産出。
  • ペルー:かつて最大の産出国。アンデス山脈に豊富な鉱床。
  • ロシア:鉛・亜鉛・金の鉱山に伴って産出。
  • オーストラリア:鉱物資源国で、銀も副産物として安定的に供給。
  • その他:ポーランド、チリ、アメリカ合衆国などでも産出。

世界の銀生産の大部分は「ラテンアメリカ(メキシコ・ペルー・チリ)」と「中国・ロシア・オーストラリア」に集中しています。

補足:2024年の傾向

出典:InvestingNews(2025年8月発表)

  • 2024年も、メキシコが最大の銀生産国。
  • 上位3カ国(メキシコ、中国、ペルー)は変わらず。Investing News Network (INN)

出典:VisualCapitalist

なぜメキシコが常にトップなのか?

  • メキシコは、西銀地方(ザカテカス州など)に大規模な銀鉱山が集中。
  • 世界最大の銀メーカーである Fresnillo(フレスニージョ) や、巨大な Peñasquito(ペニャスキート)鉱山 が存在します ウィキペディア+1Investing News Network (INN)

ここまでこらん頂きありがとうございます。ここからは、銀の相場のお話。銀相場はこのサイトの身近な科学というより経済的なお話なので、おまけですが、知りたい方もいるかと思いましたので、相場観が気になる方は、引き続きご覧ください。

4. なぜ銀の価格が上がっているか(2025年現在の主な要因)

(1) 需給の構造的なひっ迫

(2) 増大する工業需要 ― 特にグリーンエネルギー・電子分野

  • 銀は非常に優れた導電性を持ち、太陽光パネル(PVセル)、電気自動車、自動車や電子機器の接点・回路、AI関連ハードウェアなど、現代技術で不可欠な金属です。sprott.comGoldSilverCarbon Creditsキャピタル.com
  • 再生可能エネルギーの拡大や電気自動車の普及、さらにはAI・IoTのハードウェア拡大により、銀の産業用途需要が急速に増加しています。これが価格を押し上げる強力なファンダメンタルズになっています。sprott.comGoldSilverキャピタル.comCarbon Credits

(3) 投資需要の復活と安全資産としての魅力

  • 金と同様に、銀も「インフレヘッジ」や「価値保存の手段」「安全資産(safe haven)」としての役割を果たします。特に不安定な経済環境、地政学リスク、金融市場のボラティリティが高まる局面では、投資家が銀に資金を移す傾向があります。ナスダックsprott.comウィキペディアGoldSilver
  • 2025年に入って、金が歴史的高値を更新する中で、金価格の上昇が銀価格にもポジティブな連鎖を生んでいるという指摘もあります(「金銀比率(金価格/銀価格比)」の縮小期待から銀にも投資が向かっている)。wisdomtree.euGoldSilverキャピタル.comウィキペディア
  • また、ドル安傾向や金融政策の緩和期待も、非利息資産である銀の魅力を高めているという分析があります。ナスダックGoldSilverwisdomtree.eu

(4) 市場心理とテクニカル要因

  • 長く抑えられていた銀価格が、テクニカル上の重要な節目(たとえば $35/オンスや $40/オンス)を上抜けたこと自体が、「買いが買いを呼ぶ」モメンタムを引き起こしています。GoldSilverwisdomtree.euDiscovery Alert
  • 市場参加者の中には、「銀は歴史的に金銀比率で見ると割安」であり、今が“割安反転のチャンス”という見方を強めている人が多く、そうした期待感がさらなる投資需要を呼び込んでいます。gainesvillecoins.comウィキペディアキャピタル.comGoldSilver

5. 将来の見通し:価格はどうなるか?

強気派の主な論点

  1. 供給不足が続く限り、価格は高値維持または上昇トレンドにある
     銀は副産物としての供給依存が強く、採掘や精錬能力の増強が困難であるため、需要の伸びを吸収しきれないという構造的な制約があります。sprott.comCarbon Creditswisdomtree.eugainesvillecoins.com
  2. 工業用途、特に再生可能エネルギーやクリーンテック分野の需要増
     太陽光発電、電気自動車、IoTやAIハードウェアの増加というマクロトレンドが、銀の需要を今後も拡大させると見られています。これが「銀は“安全資産”であるだけでなく“成長素材”でもある」という魅力を高めています。Carbon CreditsGoldSilverキャピタル.comsprott.comgainesvillecoins.com
  3. 金と比べた割安感(ゴールド/シルバー比率の縮小期待)
     銀が長年割安に放置されてきたという見方があり、金銀比率が過去の平均水準に戻れば、銀価格はさらに相対的に上昇余地がある、という論点です。gainesvillecoins.comキャピタル.comGoldSilverウィキペディア
  4. マクロ経済・金融政策の不確実性が銀の魅力を高める
     ドル安、インフレ、金融政策の緩和期待、不安定な市場環境などが、銀の「価値保存手段」「代替資産」としての魅力を引き上げているという見方です。ナスダックGoldSilverキャピタル.comwisdomtree.eu

弱気・慎重派のポイント

  1. 銀は金に比べて価格変動が大きく、不安定
     工業需要の変動や景気変動、製造業のサイクルによって需要が落ち込むと、銀価格は急落することもあります。需要面の急激な縮小や投資資金の引き上げがあると、下振れリスクが大きい。ウィキペディアキャピタル.comナスダック
  2. 供給面が拡大する可能性
     銀の価格が高騰すれば、それを受けてリサイクル銀や代替採掘プロジェクトが増えたり、副産物としての銀供給が増えたり、あるいは価格が高いことで新規の投資が進む可能性があります。供給側が一度動き始めれば、供給ひっ迫が緩和されるかもしれません。キャピタル.comCarbon CreditsScottsdale Bullion & Coin
  3. 市場センチメントの逆回転リスク
     銀価格の上昇がテクニカル的・投機的なモメンタムで進んでいる面が強いため、投資家心理が逆回転(利食い売り、リスクオフモードへの移行)すれば、一気に下挫するリスクがあります。Strategic Metals Investキャピタル.comwisdomtree.eu
  4. 金との比較で投資家が再調整する可能性
     銀が過度に買われて金銀比率が縮みすぎると、再び「金の方が価値の保存手段として優れている」という見直しが起き、銀から金や他の資産へ資金流出が起きることも考えられます。ウィキペディアキャピタル.com

投資家や市場のコンセンサス(今後の予測)

  • 多くの投資運用企業や市場アナリスト、貴金属専門会社は 2025年中に銀が $35〜$45/オンスの水準まで上昇するという見通しを持っています。sprott.comgainesvillecoins.comキャピタル.comGoldSilverReuters
  • 一部では、さらに強気のケースとして、2026年〜2027年あたりで $50〜$77/オンス、あるいはそれ以上という中長期ターゲットを提示しているところもあります。gainesvillecoins.comキャピタル.comCarbon Credits
  • 一方で、分析モデルや予測ツールによっては「2025年は $31–34/オンスあたりを平均水準と見なす」「短期的にはスパイクするが、それを過ぎれば落ち着く」という慎重な見方も根強くあります。キャピタル.comScottsdale Bullion & Coinwisdomtree.eu
  • 市場参加者のセンチメントとしては、「銀は“今後10年で最も注目される貴金属の一つ”」という見方を持つ人が増えており、インフラやクリーンエネルギー投資、電気車や再生可能エネルギーの拡大といった大きな潮流が、銀を“成長素材”としてより強く位置づけ直すきっかけになっている、という判断が多く見られます。

リスクと注意点

ただし、投資として銀を考える場合、いくつか留意すべき点があります:

  1. 銀価格の高いボラティリティ:上昇時は大きく伸びる可能性がありますが、下降時も急落リスクがあります。
  2. 需給バランスが逆転する可能性:供給が追いついたり、工業需要が鈍化したり、投資家心理が冷えると、価格は急速に下がることがあります。
  3. ゼロ金利や金融引き締め政策、ドル高方向への転換は、銀価格には逆風となる可能性があります。
  4. 金との相関やその他マクロ資産(株式、クーポン資産、他のコモディティなど)との資金循環からの影響も無視できず、単独での動きだけで判断するのは危険です。
  5. 中長期的な「技術代替や材料代替」リスク:たとえば、銀の導電性特性を代替する新素材が出てきたり、太陽光パネルの設計が銀をあまり使わず効率よく電力変換できるようになると、需要が想定より伸びない可能性もあります。

結論

現在の銀価格上昇は、供給側の制約・構造的な市場ひっ迫と、再生可能エネルギーや電子デバイス用途などの工業的需要の急増、さらに金融市場におけるインフレヘッジや代替資産としての位置づけの強まりという3本の柱が主因と考えられます。

今後も、これらの構造的要因が持続すれば、銀価格の高値維持やさらなる上昇余地は十分にあり得ます。一方で、供給側が動き出したり、マクロ経済情勢が変化したり、投資マインドが逆方向に振れたりすると、価格の下振れや調整リスクも無視できません。

まとめ

う~ん、結局どうなるかという未来のことは誰にもわからないということでしょうか…しかし、確率的には上昇傾向を維持しそうですね。また、相場は「思惑」で動いています。その「思惑」の方向に乗っていけば、利益を得ることも可能だということですね。

現在の紙幣は不換紙幣で、各国がその紙幣価値を保証していることで成り立っています。しかし、現在、地政学的、経済的に不安定です。特に日本円は現在その価値が下がっているといえます。そのため、ポートフォリオの中の現物資産の割合を少し多くしていくことで資産防衛をすることも対策の1つですよね。

現物資産といえば、金が特に有名ですが、金の高騰により銀も現物資産として注目されています。

私は金でも銀でもいいです(笑)。どちらもスキですよ。

ここまで、ご覧いただきありがとうございました。

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