水酸化ナトリウムっていうのは、とても強い“あく”みたいなものです。
白い粉やつぶつぶの形をしていて、水に入れると熱くなって、とても強い“アルカリの水”になります。
そのまま皮ふや目につくとケガをするほど、とても危ない物質ですが、実は私たちの生活のいろんなところで役に立っています。今回は、そんな水酸化ナトリウムについてご紹介します。
基本情報
- 化学式: NaOH
- 別名: 苛性ソーダ(かせいソーダ)、苛性ナトリウム、カセイアルカリ
- 外観: 白色の固体(粒状・フレーク状・ペレット状など)、吸湿性が強い
- 溶解性: 水に非常によく溶け、強アルカリ性の水溶液をつくる(発熱を伴う)
主な性質
- 強塩基: 水溶液中で完全に電離し、OH⁻イオンを供給する。
- 腐食性: 皮膚や粘膜を激しく侵す(酸と同様に危険)。
- 反応性: 酸と中和して塩と水を生成する。油脂を分解して石鹸を作る(けん化反応)。
製造方法
- 主な工業的製法: 食塩水の電気分解(塩化ナトリウム水溶液 → NaOH + Cl₂ + H₂)
- 過去には石灰ソーダ法も使われていた。
主な用途
- 石鹸や洗剤の製造(けん化反応)
- 製紙(クラフトパルプ法)
- アルミ精錬(ボーキサイトからアルミナを取り出す際)
- 排水処理(中和剤)
- 食品加工(こんにゃく、ラーメンのかん水代用など)
- 化学実験での強塩基として
取り扱い上の注意
- 強い腐食性があるため、皮膚・目に触れると危険。
- 吸湿性が高く、二酸化炭素も吸収して炭酸ナトリウムになる。
- 保管は密閉容器で。
実は 水酸化ナトリウム(NaOH)は、消防法上の危険物には分類されません。
(つまり「危険物第○類」という扱いは受けません。)その理由は、
- 消防法の「危険物」は、
- 引火・爆発するもの(ガソリン、アルコールなど)
- 酸化力が強いもの(過酸化物、硝酸など)
- 可燃性があるもの
などが対象です。
- 水酸化ナトリウムは 強い腐食性 はありますが、燃えたり爆発したりする性質はないため、「危険物」には入らないんです。
🚨ただし、
- 労働安全衛生法では「特定化学物質」や「管理物質」として扱われる場合があります。
- 毒物及び劇物取締法(劇物指定) → 固体(水酸化ナトリウム)は「劇物」として扱われます。
- 危険ではないわけではなく、あくまで「法律上の分類」が違うということです。
生活の中での身近な利用例
🧼 1. 石けん・洗剤
- 動物油脂や植物油にNaOHを加えると「けん化反応」で石けんができます。
- つまり固形石けんや一部の洗剤は、製造過程でNaOHが必須。
手作り石鹸を作るときにもけん化率を計算して使用します。水酸化ナトリウムは水と反応する時、とても発熱します!化学実験をするつもりで、ゴーグルやニトリル手袋を装着して作業することをお勧めします!
📄 2. 紙製品
- トイレットペーパーやコピー用紙は「パルプ化」にNaOHが使われて、木材からセルロースを取り出しています。
私たちが普段使う紙も、間接的にNaOHが関わっています。
🍜 3. 食品加工
- こんにゃく:凝固剤として使われる石灰水(Ca(OH)₂)に加えて、NaOHも利用されることがある。
- ラーメンの麺:「かん水」の代わりに少量のNaOHや炭酸ナトリウムが使われ、独特のコシと黄色みを出す。
- オリーブの渋抜き:果実をNaOH水溶液に浸して渋み成分を除去。
むかしのこんにゃく作りでは、いまのように「水酸化カルシウム(石灰)」や「水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)」を精製して使うのではなく、木灰(あく) を水に溶かしたものを使っていました。
中国では古くから、ラーメンを作るときには「かんすい(鹹水)」と呼ばれる 天然のアルカリ性の水 を使って麺を作っていました。
- この水には、主に 炭酸カリウム(K₂CO₃) や 炭酸ナトリウム(Na₂CO₃) が含まれていて、
- 麺に独特のコシ
- 黄色っぽい色
- プリッとした食感
を生み出します。
🚰 4. 水処理・掃除用品
- 排水管クリーナー:「パイプユニッシュ」などの強力クリーナーはNaOHが主成分。油脂を分解して詰まりを除去します。
- 下水処理場でも、中和剤や汚水の処理に使われています。
家庭での掃除では 排水管クリーナーが代表的な例です。
油汚れ・固まった汚れに強いけれど、扱いには注意が必要な“強力なお助け薬”という感じです。
最近のお掃除には、重曹やクエン酸などを使用して環境にやさしいお掃除方法がよく紹介されていますね。
🏭 5. アルミ製品
- アルミ缶やアルミホイルの原料(アルミナ)を作る際にボーキサイトをNaOHで処理します。
→ つまり、缶ジュースやアルミホイルも、見えないところでNaOHが役立っています。
まとめ
普段は危険薬品というイメージのある水酸化ナトリウム(NaOH)ですが、
- 石けん
- 紙
- ラーメン
- 排水管クリーナー
- アルミ缶
注意点 ⚠️
- 強いアルカリなので、皮膚につくと ヌルヌルしてやけどのようなケガ をします。
- 家庭で使うときは「市販の洗剤・クリーナーの形」で、安全にパッケージどおりに扱うのが基本です。
- アルミや銅などの金属を溶かしてしまうので、使う場所を選ばないと危険です。
実は生活に深く入り込んでいます。だから、水酸化ナトリウムは『危ないけど大切なもの』。
正しく使えば、わたしたちのくらしをすごく助けてくれていることがわかりますね。
